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  交通エコロジー・モビリティ財団 交通環境対策部
第5回 EST交通環境大賞の審査結果
   

【大賞 国土交通大臣賞】富山市
「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」

(概要)
 富山市では、これまで過度な自動車依存による市街地の拡散、公共交通の衰退などにより、中心市街地の空洞化が進行しており、その結果、少子高齢化社会の進展により車を自由に使えない市民にとっては極めて暮らしにくい都市構造となっているほか、CO2排出増等の環境負荷が増大するなどの課題が深刻化する状況にあった。
 これらの状況に対応するため、本市では、鉄軌道をはじめとする公共交通を活性化させ、その沿線に居住、商業、業務、文化等の都市の諸機能を集約させることにより、公共交通を軸とした拠点集中型の環境負荷の少ない「拠点集約型のコンパクトなまちづくり」を推進している。
 具体的には、LRTネットワーク形成、地域自主運行バス事業、自転車市民共同利用システム、モビリティマネジメント等、公共交通を活性化させ、利用を促進するための各種事業に取り組んでいる。

利用者が激減していたJR富山港線を公設民営の本格的LRT「富山ライトレール」として整備。運行頻度増加、完全バリアフリー化、フィーダーバスの運行等を行い、開業前と比較して平均利用者数が約3倍となり市民の足として定着
富山駅周辺と中心商業地区のアクセス強化、回遊性向上等を目的に市内電車環状線化事業を実施。開業後は平日・休日とも利用者が増加
呉羽地域や水橋地域等では地域自主運行バスを運行。次世代を見据えた住民参加型の持続可能なバス交通として機能
平成22年度から「とやまレールライフ・プロジェクト」を実施。情報誌やラジオ等のメディアを活用し市民や市内企業への利用啓発に努め、交通環境学習の実施など、多角的・戦略的な観点からモビリティマネジメントを展開
平成22年3月から自転車市民共同利用システム「アヴィレ」を導入。登録者数が平成24年度で3千人を超え公共交通の一つとして機能
将来的な公共交通沿線居住人口を現在の約3割から約4割に増加させ、全体のCO2排出量を平成17年度比で平成42年度には30%の削減を目標としており、公共交通沿線での居住や自動車から公共交通への転換を促進  等

(授賞理由)
 第1回で特別大賞を授賞しておりその時の内容を除き審査した結果、応募された内容のなかで最も総合的に優れ、今後の取組も期待できることが高く評価された。中心市街地・公共交通沿線居住推進事業が実績を上げ、自転車市民協同利用システムの利用が進み、モビリティマネジメント事業等に取組まれるなど、優れた事業が多い。北陸新幹線開業後の富山駅高架下におけるLRT空間の整備を開始するなど、これからも期待できることから、大賞を授賞することとなった。



【大賞 環境大臣賞】両備グループ
「公共交通利用で『歩いて楽しいまちづくり運動』」

(概要)
 両備グループでは、瀕死の状態にある地域公共交通を、より良いカタチで次世代へ残すために、公共交通の利用促進を図るプランを次々と実施したが、利用者の減少を緩める効果があっただけで、抜本的に需要を増やす力にはならず、残念ながら、地域公共交通の活性化には至らなかった。
 そこで、様々な利用促進プランの実施を通して、公共交通の活性化には肝心要の「地域=まち」が元気になる必要があり、公共交通は、「まち」を元気にするツールの一つであると気づいた。
 現在、地方都市では特に、マイカーでドア・ツー・ドアの通勤や通学となり「まち」を歩く人が減っている。外出が歩行障害と認知症のリスクを大幅に軽減するという研究成果や公共交通を利用しての移動が体型維持(肥満リスクの軽減)に有効であるという研究成果からも、歩くことが環境面だけでなく、地域社会の活性化や人々の幸せな日常生活に必要不可欠であることは明白であり、公共交通の利便性を高めることで、一人でも多くの人に歩いて外出してもらえるようにと始めた運動が、「公共交通利用で『歩いて楽しいまちづくり運動』」である。
公共交通利用のパネルディスカッションの開催
「岡山県公共交通利用を進める県民会議」を結成
パーク&バスライドやエコ定期券、ことぶきパスやサマーKidsパス(夏休み子供パス)などの魅力ある定期券を導入
日本で初めて平成15年3月、MCDecaux(エムシードゥコー)社のバスシェルターを設置(岡山市に2基)
両備グループのバス用機器の独自開発(バス停簡易照明の自社開発、世界初のバス車載用ウイルス除去装置の開発)
LRV「MOMO」(次世代型超低床車両)の開発・投入とコンパクトシティのシンボルとしてのグレースタワー建設
未来バス「SOLARVE(ソラビ)」やEV車両の開発・導入(ソラビは、ソーラーシステムやハイブリッドシステム等、先進技術を集約した世界で唯一の未来型路線バス)  等

(授賞理由)
 地元である岡山に限らず、地方の公共交通を守るため、和歌山電鐵、中国バス、井笠鉄道等の経営困難な企業を引き受けて路線を維持したことに加え、様々な場所で公共交通の普及振興のためのコンサルティングやアドバイス、普及啓発活動等を行っている点が高く評価された。岡山市内で優れたデザインの環境に優しいLRVやバスの導入など、公共交通の利用促進のための様々な取組を継続的に進め温暖化防止にも貢献している。この結果、本表彰制度において、民間企業による初めての大賞授賞となった。



【優秀賞】日立市
「誕生『ひたちBRT』 〜新しいまちづくりへの第一歩〜」

(概要)
 日立市では、平成17年に地域の足として親しまれた日立電鉄線の廃線敷を活用したBRT(Bus Rapid Transit<バス高速輸送システム>)の導入を進めている。BRTは、バス交通による大量かつ高速の輸送機関であるが、本市は、地方都市における地域特性や交通需要に応じた持続可能な移動手段となるよう、この乗り物を「ひたちBRT」と呼んでいる。
 ひたちBRTは、廃線から8年経過した平成25年3月に第T期区間(久慈−大みか間)で運行を開始した。運行までには、地域住民へのアンケートや意見交換等を幾度となく行うとともに、地域住民、沿線、高校及び商業観光事業者等で構成するサポーターズクラブを設立し、ひたちBRTの運行ダイヤ、停留所配置及び名称などの検討を行い、地域が利用しやすい交通環境の実現を図った。
 さらに、地域住民が誇れる乗り物にするため、既存の路線バスとの差別化を図り、車両デザインや停留所サイン等の検討を行い、それを実現してきた。
 今後は、このような交通機関の整備と併せ、沿線のまちづくりのひとつのツールとして、地域や交通の活性化、そして環境に配慮した持続可能な社会を目指し、第U期区間の事業を展開したい。

平成17年に廃線となった日立電鉄線の跡地を活用し、バス高速輸送システム(BRT)の導入を推進。全国初のBRT専用道路の脇に歩道を併設し、「歩いて暮らせるまちづくり」の実現を目指す
平成25年3月、第T期区間(全体計画の5分の1)が運行を開始。運行区間は約3.2km、そのうち専用道路は約1.3km、運行時間は約12分間。東日本大震災で津波被害を受けた久慈地区が起終点として整備され復興への第一歩を踏み出した
運行区域周辺のバス利用者が4倍程度増加。公共交通サービスの向上、バス交通に対するマイナスイメージの払しょくに寄与  等

(授賞理由)
 国内における鉄道廃線敷にバスを走らせる先進事例の一つである。鉄道を維持できなくなった地域で定時性を確保したバスを維持することで、自家用自動車への転換や環境負荷の増加を防ぐことができることから、今後、国内で鉄道を維持することが困難な地域での選択肢の一つを示した点が評価された。


【奨励賞】秋北バス株式会社<取組幹事> 2
「バス&ウォーク事業」

(概要)
 公共交通機関がいくら環境に良い乗り物と伝えても、利用者側は「わかってる」という感覚で、それだけでは乗降率アップにはつながらない。そこに「なるほどね」と納得させる仕掛けが必要となる。また各バス会社が苦労して様々なイベントを活用しバス利用を普及しているが、そこで肝心なのは、「面白い」と思わせる仕掛けである。「なるほど」から「面白い」にさせ、「参加してみよう」と思わせるプロット作りが必要と考える。「バス&ウォーク」は、このプロモーションを通じて多くの参加者が増えることにより、結果的に「環境的に持続可能な交通」になるという仕掛けである。新たな生涯顧客を作るために、バス会社が路線バス利用促進のため「歩くこと」を提唱することは、収益向上という観点からかけ離れた行為で利用促進とは真逆のことのように受け取られるかもしれないが、従来どおりの「乗ってもらわないと路線バスがなくなりますよ」という働きかけでは乗車促進には結びついてこなかった経験から、環境保全活動を新たに事業と結びつけ、「カラダの健康のために歩こう。地球の健康のためにバスに乗ろう。」というコンセプトで事業を行った。

市内のバス停留所に「次の駅までバスを使うとCO2排出量○s クルマを使うとCO2排出量○s 歩くと○`カロリー消費」と数値を記入したプレートを設置。普段バスを使わない人にも、健康面からのアプローチで家族や友人と楽しめる環境を整備
ウオーキングの効果について医師会によるアピールを実施。参加者には健康手帳配布
エコライフゲームの市内小学校への出前授業実施
環境対応型回数券「エコロジー回数券」の販売を開始。地球温暖化防止に貢献でき、「バスに乗ってエコな取り組みにチャレンジしよう」というコンセプトで、ノーマイカーデー導入などを営業できる商品として展開
BDF燃料バスの運行を開始  等

(授賞理由)
 公共交通を維持することが厳しい地域で、大学・民間企業・NPO・自治体等と連携したコンソーシアムを通じ、長年にわたりバス交通の維持に努めている。「カラダの健康のために歩こう。地球の健康のためにバスに乗ろう。」をコンセプトに、バス&ウォーク事業などのアイデア溢れたオリジナリティを有する取組を多数行っている点が評価された。

2 <メンバー>株式会社早稲田環境研究所(早稲田大学環境総合研究センター)、株式会社地球健康クラブ、NPO469maネット、富士火災海上保険株式会社
<協賛>大館市、能代市、北秋田市、大館市教育委員会、能代市教育委員会、北秋田市教育委員会、大館北秋医師会、能代市医師会



【奨励賞】山口市公共交通委員会
「創ろう!守ろう!みんなの公共交通」

(概要)
 山口市は2度の合併を経て、都市部から農山漁村部を含む1,023平方キロメートルという広大な面積を有し、多核分散型の都市構造となり、これまでのような行政主体の画一的な交通システムでは、地域の多様なニーズに対応できず、財政的にも維持・拡充が困難となった。
 このような中、山口市では、平成19年に山口市市民交通計画を策定して「安心して住み続けられる、クルマに頼りすぎない交通まちづくり」を目指して、行政や事業者だけでなく市民(関係者)も一緒になって事業に取り組んでいる。
 公共交通体系の整備だけでなく、公共交通を支える体制づくりとして、ノーマイカーデーやモビリティマネジメント等の公共交通を利用する動機付けとなる事業も展開している。

市の交通体系を基幹交通と、コミュニティ交通の2つに機能分担し、相互の連携を強化することで、市民の連続的な移動を確保
公共交通ネットワークの強化や利便性の向上、公共交通の利用促進を積極的に図り、過度なマイカー利用から適度なマイカー利用への転換に向けた取り組みを実施
【公共交通を利用する動機付けとなる事業】
クルマと公共交通の上手な使い方を考えるプロジェクト:毎年1自治会の協力をいただきセミナーの開催とトラベル・フィードバック・プログラム(TFP)を実施
山口市ノーマイカーデー:市内事業所に参加を募り毎月第3金曜日を実施日として一斉実施
山口市民公共交通週間:前述のノーマイカーデーと異なり全市民を巻き込み実施
バス・鉄道乗り方教室
地域勉強会の開催:平成24年度は96回開催、市民も一緒になって公共交通を育てる意識づくり  等
【利用しやすい・わかりやすい公共交通の整備】
市内のバス・鉄道の時刻を網羅した山口市総合時刻表の作成
公共交通マップの作成
パーク&ライド、サイクル&ライドの整備
主要バス路線のパターンダイヤ・系統番号の導入(交通事業者と協働)
待合環境整備  等

(授賞理由)
 人口減少が進み、公共交通の維持が難しくなりつつある地域で、有識者・事業者・関係機関・市民等の構成で実のある公共交通を支える体制が構築されている。地味だが、年間96回もの勉強会を重ねながら、着実に公共交通利用促進の取組を進めており、CO2を排出削減していることが優れている点として評価された。

     
     
 
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