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  交通エコロジー・モビリティ財団 交通環境対策部
第9回 EST交通環境大賞の審査結果
   

【大賞 国土交通大臣賞】WILLER TRAINS株式会社および北近畿タンゴ鉄道生活交通改善事業計画に関する協議会
「人と環境にやさしい地域鉄道を目指す京都丹後鉄道の取り組み」

(概要)
 北近畿タンゴ鉄道は地域の自動車分担率の上昇に伴い、利用者数と運賃収入がピーク時の約3分の2にまで減少したことにより、設備投資が滞り、ダイヤが減便されサービス低下を招き、結果として地域の交通活動に起因する環境負荷が大きくなるという悪循環を招いていた。
 そこで、地域に根ざした利便性の高い交通サービスの提供により、地域住民の自動車から公共交通利用へのライフスタイルの転換と、交流人口の拡大による地域振興を目指して、平成27年4月1日より新たに京都丹後鉄道として運行を開始した。
 線路・駅・車両等のインフラ部分を沿線自治体などが出資する第三セクターである北近畿タンゴ鉄道株式会社が保有、民間会社であるWILLERTRAINS株式会社が運営を担うという全国初の形式での上下分離方式を採用している。
 これまでの代表的な取組は以下の通りである。

【利用サービスの改善】
毎時同じ時刻に運行するパターンダイヤへの指向、通勤ライナーの新設、観光列車や企画乗車券の充実
利用促進協議会や地域の様々な団体の協力を得て、スタンプラリー、こども向けの情報発信やイベントなどを実施
【環境にやさしい取り組み】
農産物の出荷を旅客列車に混乗させる全国初の貨客混載の取り組み、列車のアイドリングストップ、駅での廃油回収を実施
【沿線自治体の取り組み】
通勤制度の改正、鉄道・バス総合時刻表の作成、駅舎・トイレ等の改修、ダイヤ改正を踏まえた事業所への通勤利用のチラシ配布、京丹後市内で行われている上限200円バスと連携した高齢者片道上限200円レール制度などを実施

(授賞理由)
 地域で抱えていた課題を解決すべく官民連携で長年取り組んだ結果、北近畿タンゴ鉄道自身が「下」を持ち、「上」の運営会社を公募する全国初の上下分離方式を導入して、WILEER TRAINS(株)を設立し地域鉄道を再生させた。民間目線と利用者視点に立ったサービス改善等を進めるとともに、海の京都等の観光まちづくりと連携した公共交通網の形成及び地域住民の自動車から公共交通利用へのライフスタイルの転換を進め、地域の交通環境を中長期的に改善した点を高く評価した。道の駅との連携による貸客混載輸送は、農業振興と地域活性化を目的とした貨客混載事業として物流総合効率化計画の認定を受けた全国初の事例である。本取組により、従来は各農家が個別に道の駅まで運搬していたものを駅間は鉄道へモーダルシフトする仕組みを構築し、CO2削減による交通環境の改善、地域鉄道の安定収入の確保等を図った点を評価した。観光列車の整備や地域と連携した周遊ルートの開発等により、マイカーで来ていた観光客の足を電車にシフトさせることに成功し、環境にやさしい観光を推進した。官民が各々の役割を果たすと同時に官民一体となって、地域の足、物流、観光など交通や社会が抱える様々な課題の解決を環境の観点に資する形で進めた本取組みは、持続可能な交通環境の構築事例として総合的に高く評価でき、全国の自治体の参考となることから、大賞を授賞することとした。



【大賞 環境大臣賞】福井県クルマに頼り過ぎない社会づくり推進県民会議
「クルマに頼り過ぎない社会づくり」

(概要)
 福井県は全国トップレベルの自動車依存社会であり、過度な自動車への依存は、地球温暖化の進行や公共交通機関の衰退などの問題につながることから、平成14年度に策定された「新世紀ふくい生活交通ビジョン」に、自動車と公共交通機関などが共存する社会の創造を掲げ、公共交通の活性化に取り組んでいる。現在は、県知事のマニフェストに基づき、相互乗り入れ事業や駅前線延伸、「カー・セーブ戦略」といったモビリティ・マネジメント(交通手段の最適利用)を推し進め、環境負荷の低減と公共交通機関の利用拡大のための政策が強化されており、これらの内容は平成25年に改定された「福井県環境基本計画」にも反映されている。
 これらの活動の一環として、学識経験者、交通事業者、県、市町等から成る「福井県クルマに頼り過ぎない社会づくり推進県民会議(以下、「県民会議」という。)」が平成23年に設立された。県民会議は、平成23年度に策定されたアクションプランに基づき、自動車と公共交通機関などの適切な使い分けによる、温室効果物質排出の増加や公共交通機関の衰退を防ぐための多岐に亘る取り組みを実施してきた。
 主な取り組みは以下の通りである。

えちぜん鉄道区間6.0kmと福井鉄道区間20.9kmの計26.9kmの鉄軌道区間において、異なる事業者による鉄道と軌道の相互乗り入れという全国初の事業を実施
わずかな距離を残して結節していなかった福井鉄道の電停を移設し、JR、福井鉄道、えちぜん鉄道、バス、タクシー、コミュニティサイクルが広場で結節した総合交通ターミナルの整備
定時性確保のために、中心市街地交差点の右折車両分離方式信号とPTPSの導入
えちぜん鉄道では新型低床車両導入や駅ホーム低床化を実施
駅でのパークアンドライド駐車場、県立施設でのパークアンドサイクルライド駐車場設置による、電車や自転車を利用しやすい環境づくり
福井駅を起点とした一定エリア内でバスの均一料金制の実施、バスの現在地等が分かるバスロケーションシステムの設置等のバスの利便性向上を目的とした取り組み
新たな取り組みとして、交通機関への再生可能エネルギー及び回生エネルギーの活用事業を推進

(授賞理由)
 自動車に頼り過ぎない社会づくり、自動車と公共交通機関などの共存する社会の創造を目指し、自治体や事業者などが一体となってハード・ソフト両面から総合的に長年に亘り取り組んでいる点を高く評価した。過去には、公共交通である鉄道が廃止されかねない状況であったところ、県及び沿線市町村の行政・市民が様々な活動を行うことで鉄道を存続させた。これは、鉄道利用者の多くが自家用車の利用に転換してしまいかねなかったのを防いだ効果があり、低炭素化への逆行を阻止したという観点からとても意義がある。その後も、駅施設などの結節点改良やパークアンドライドなどによる鉄道やバスなどの公共交通機関の利用促進に加えて、コミュニティサイクルの整備や自転車の駅、バイコロジスト宣言などによる自転車利用の促進により、低公害化・低炭素化社会に貢献している。これら一連の取り組みは、全国の自治体の参考となることから、大賞を授賞することとした。



【優秀賞】姫路市
「公共交通を中心とした姫路市総合交通計画の取り組み」

(概要)
 姫路市では、平成20年8月に「公共交通を中心とした姫路市総合交通計画」を策定し、関係部局により諸施策を推進している。本計画の推進により、減少傾向にある公共交通利用者数を増加させ、中心市街地での渋滞緩和や運輸部門におけるCO2削減など「経済」「安全・安心」「環境」の3つの視点で効果を引き出すこととしている。本計画では【公共交通の利便性向上】と【利用環境の改善】、【参画と協働の推進】の3つを柱として施策展開している。

【公共交通の利便性向上】
 新駅整備を含む駅周辺整備など交通結節点の整備や旅客ターミナル整備、離島部でのコミュニティバス運行等を実施しており、特にJR姫路駅周辺においては、環境空間を格段に増やした駅前広場整備やトランジットモールによる一般車両への規制に加え、2次交通としてシェアサイクルを導入、公共交通と徒歩自転車による移動を促進している。
【利用環境の改善】
 路線バスでバスロケーションシステムを導入、また、鉄道・路線バスでの乗車券のIC化など、交通事業者と協力し改善を図っている。
【参画と協働の推進】
 公共交通の利用促進に力点を置き、JR姫新線では、JR西日本による輸送改善事業、増便試行を契機として、沿線市町・事業者とともにチャレンジ300万人キャンペーンを開始、地域資源を活用しながら継続して乗車増に取り組んできた。また、毎年度、交通事業者とともに小学校児童を対象とした公共交通の授業を行うなど次世代に向けた取組も実施している。

(授賞理由)
 公共交通利用者数を増加させ、渋滞緩和やCO2削減などに効果を引き出すことを目指し、 鉄道の沿線自治体、交通事業者、民間事業者等と連携して交通環境対策に取り組み、環境改善量を正確に把握し、効果を確認できる点を高く評価した。また、多くの人が訪れる姫路城と駅との関係を再構築した姫路駅北駅前広場整備やトランジットモール化の実現により、人と公共交通が主の中心市街地が実現できている点を評価した。これらの一体的な取組みが市内で普及・定着し、鉄道の利用者が増加傾向に繋がり、効果が着実に現れている点が評価された。


【奨励賞】株式会社桐生再生、株式会社シンクトゥギャザー、群馬大学、桐生市
「環境に優しい低速電動バスの開発とその普及の取り組み」

(概要)
 群馬県桐生市では、群馬大学が中心となって実施された脱温暖化研究プロジェクトの一環で開発された「低速電動バス」を平成24年に導入し運行実験を続けている。この低速電動バス(最高速度19q/h)は、家庭用100v電源で充電できるバッテリーと、屋根に載せた600wの太陽光パネルを動力源とし、ガソリンは一切使用していない。
 平成27年から桐生市内に本社を置く観光事業会社(株式会社桐生再生)が低速電動バス4台を保有し、桐生市内の駅や遊園地・動物園、歴史的建物が残る地区などを結ぶ観光ルートで定期運行を実施している。公共交通が十分に整備されていない桐生市内において、従来は自家用車で各地を巡る観光客が多かったが、この観光ルートの運行が広まるにつれ、少しずつ「低速電動バス+徒歩」という観光スタイルが定着しつつある。
 上記の観光ルートの運行とは別に、高齢者が多い山間部での運行を社会実験で実施した。最寄の路線バスの停留所まで3〜4kmを運行し、乗り継ぎの移動手段としての低速電動バスの有効性の検証も行っている。

(授賞理由)
 全国で初めて低速電動バスを導入し、低炭素な交通事業と新たな観光地スタイルの定着を図る取組はオリジナリティがある。桐生市および株式会社桐生再生、株式会社シンクトゥギャザー、群馬大学、運行地域など地域全体を巻き込んで6年にわたり着実に取組を継続し、その間イベントでの活用やマスコミにも紹介され、地域住民に広く認知、普及されている点が評価された。


【奨励賞】弟子屈町地域公共交通活性化協議会
「弟子屈えこパスポート事業」

(概要)
 弟子屈町地域公共交通活性化協議会では、マイカー規制と「環境にやさしい観光交通」の構築を一体的に取り組んでいくことを考えて、平成21年3月に「弟子屈町地域公共交通総合連携計画」を策定した。
 この計画に基づく事業として平成21年度より平成25年度までの5か年に亘り、「弟子屈2daysえこパスポート(通称:えこパス)」事業を官民一体となって推進してきた。また、平成26年度からは利用者の利便性向上のため、新たに2日券・3日券・5日券・7日券を作成し、名称も「弟子屈えこパスポート」へ変更し現在に至る。
 「えこパス」は、地元路線バス・ハイヤー運行事業者、旅行会社の協力のもとで実現したものである。これを購入することにより、摩周湖・屈斜路湖等、町内の主要観光スポットの周遊に必要なバスやジャンボタクシーが有効期間内乗り降り自由となる他、提示することにより手荷物の無料保管や、町内の協賛店において多彩なサービスを享受可能となる。
 また、昨今の外国人旅行者の増加を受けて平成28年度よりホームページ・チラシ・チケット等を多言語化、平成29年度からはバス車内の音声案内を数か国語で行う等、外国人旅行者が利用しやすい環境整備も進めている。
 なお夏季運行期間中(87日間)の全路線バスの燃料には食用廃油を利用した100%BDFを使用している。

(授賞理由)
 隣接自治体、バス事業者、町内観光関連店、市民団体等と連携しながら9年にもわたって続けられてきた取り組みは、環境負荷削減のみならず、町内観光関連店の利用を促進し地域経済の活性化にも貢献するもので、他地域への展開も可能である点が評価された。


【奨励賞】川崎市
「環境負荷低減に向けたエコ運搬制度の推進」

(概要)
 川崎市の臨海部エリア(川崎区)は多くの工場・事業場が集積しており、環境負荷の大きな大型車の物流車両が多く走行する地域で、二酸化窒素の大気環境濃度が高い状態が続いており、同エリアの自動車排出ガス測定局では二酸化窒素の環境基準を達成できていなかった。そこで、新たな交通環境負荷低減対策として、「川崎市公害防止等生活環境の保全に関する条例」の一部改正により、平成22年4月から「環境に配慮した運搬制度(エコ運搬制度)」を導入した。
 エコ運搬制度は、市内を走行する貨物自動車から排出される窒素酸化物及び二酸化炭素の削減を目的としており、市内の荷主・荷受人が主体となって製品や貨物の出荷、原材料の購入、廃棄物の運搬などの際、全国の運送事業者や取引先事業者に対し、次に挙げる3項目に配慮した運搬(エコ運搬)の実施を書面等により要請する制度である。
 1.エコドライブの実施及びエコドライブを行う旨の表示
 2.自動車NOx・PM法の車種規制不適合車の不使用
 3.低公害・低燃費車の積極的な使用
 エコ運搬制度では、市内の全ての荷主・荷受人にエコ運搬要請の努力義務を定め、また、環境負荷が特に大きいとされる一定規模以上の事業所(製造業、倉庫業、廃棄物処理業)には、指定荷主・指定荷受人として要請実施の義務、要請書面の一定期間の保存義務及び要請件数などの取組実施状況の報告義務を定めている。
 これにより、市内登録車両を有する事業者のみならず、市外登録車両を有する事業者に対しても、環境への配慮を求めることができる枠組みとなっている。

(授賞理由)
 荷主・荷受人が運送事業者や取引先事業者に対して環境に配慮した運搬の実施を書面等で要請する点はオリジナリティがある。8年にわたる活動を継続しているなか、環境改善量を正確把握し効果を確認できる上、平成25年度には初めて市内全ての大気測定局で二酸化窒素の環境基準を達成し、その後もおおむね環境基準を達成し、市内事業者だけでなく川崎市に乗り入れている運送事業者等も含め全国的に浸透している点が評価された。

     
     
 
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