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  交通エコロジー・モビリティ財団 交通環境対策部
第12回 EST交通環境大賞の審査結果
   

【大賞 国土交通大臣賞】YKK株式会社
「富山県黒部市における社員通勤変革への挑戦」

(概要)
 YKK株式会社  黒部事業所は、YKKグループの製造・開発機能が集約した国内最大級の拠点であり、「技術の総本山」と位置付け事業を展開している。YKKグループでは、東日本大震災を契機として本社機能の一部移転を推進し、2016年4月までに約230人の社員が東京等の首都圏から黒部事業所へ異動した。異動に伴い、移住した社員や家族等の移動手段の確保が課題となっていた。また、黒部市内には約3,300人のYKKグループ社員が生活しており、主にマイカーを使って通勤している。マイカー通勤に伴い、同事業所周辺の渋滞や駐車場の確保等も課題となっていた。
 課題解決に向けて同事業所は、黒部市公共交通戦略推進協議会へ参画し、黒部市や東京大学等と協働しつつ、以下の取組みを推進している。

【通勤需要に対応した路線バスネットワークの整備】
南北循環線の社会実験及び運行
新幹線生地線の運行
【地域公共交通の利用環境の整備】
黒部市と連携して主要工場にバス待合所を整備
社員証を活用した路線バスの運賃精算システムの導入
【マイカー通勤からバス通勤への転換促進】
マイカー通勤を制約するためのマイカー乗入れガイドラインの改定
社員や市民に向けた路線バスの周知啓蒙活動
【持続可能な取組みに向けた体制構築】
黒部市公共交通戦略推進協議会の参画を通じて、バス路線を維持するために路線経費を官民でシェアする体制を構築
生地駅周辺活性化促進協議会の参画を通じた更なる公共交通の利用促進

(授賞理由)
 大手企業が機能の一部を地方へ移転し、それに伴って移住した社員や家族等が地域の公共交通を新たに利用することで、地域公共交通を維持・確保するモデルケースとして高く評価した。特に優れた取組みとして、社員証を活用した路線バスの運賃精算システムの導入、マイカー通勤を制約するためのガイドラインの改定等が挙げられる。環境面では、YKK社員のマイカー通勤からバス通勤への転換とともに、事業所周辺の渋滞緩和や駐車場削減と緑化、カーシェアリング等も評価できる。
 YKK社員以外の黒部市民に向けた取組みの広がりは引き続き課題であるものの、会社が主体的にかつオリジナルな取組みにチャレンジし、さらに行政とも連携してESTを推進した事例として他の模範となると評価し、大賞を授賞することとした。

 



【優秀賞】小山市コミュニティバス おーバス 利用促進プロジェクト実行委員会
「小山市コミュニティバス『おーバス』利用促進プロジェクト」
 小山市・谷口綾子・片桐暁・斉藤綾・一般財団法人計量計画研究所・友井タクシー有限会社・ 株式会社小山中央観光バス・大山タクシー有限会社・関東自動車株式会社・まちの駅思季彩館・ おやまゆうえんハーヴェストウォーク

(概要)
 小山市は、市内のバス交通網として、「おーバス」を路線バス14路線、郊外部デマンドバス5エリアで運行している。最盛期には1,333万人/年いたバス利用者が10年ほど前に15.2万人/年まで落ち込みバス事業者が撤退、それ以降おーバスが市内唯一の公共交通バスとして運行を続けている。本プロジェクトは、「バスってダサい」という市民がもつイメージを刷新し、バス利用機会の増加を目指して、小山市を中心として関係者が以下の取組みを実施している。

【路線バスのイメージ刷新】
モビリティ・マネジメントの知見を活用して、バスを使ったライフスタイルを提案する生活タブロイド紙「Bloom!」の発行・配布
地元のイベントでのオープンハウスの実施や地元ラジオへの出演
【路線バスネットワークの整備】
渡良瀬遊水地へのアクセス路線の整備として、渡良瀬ラインの運行開始
病院や病院周辺の住宅開発地へのアクセス性を高めるために新市民病院線の増便及び早朝・夜間便の設定
商業施設へのシャトルバスの路線バス化による運行頻度の向上
【路線バスを利用しやすい環境整備】
おーバス全線を対象とした低価格の全線定期券「noroca」の導入
バスロケーションシステム「おーバスBus-GO」の導入
 取組みの成果として、コロナ禍でありながらも、利用者数の増加や増収を達成している。また、路線バスの取組みを小山市総合都市交通計画に位置付けて、小山市全体での交通環境の向上を図るとともに、立地適正化計画とも連携して、小山駅周辺をはじめとした中心市街地の活性化やウォーカブルなまちづくりにも影響を与えている。

(授賞理由)
 本プロジェクトは、「おーバス」の様々な関係者が参画し、立地適正化計画などの小山市の構想と連携・整合を図りつつ「おーバス」を利用促進する取組みを組織的、戦略的に行うことで、利用増加はもとより、中心市街地の活性化やウォーカブルなまちづくりに影響を与えている点を高く評価した。環境面では、自家用車からバスへの利用転換に加えて、将来的にはコンパクトなまちづくりによるCO2削減も期待できる。
 小山駅周辺のコンパクト+ネットワークのまちづくりは始まったばかりであり、中心市街地活性化等のまちづくりの効果に関する評価は現時点では困難であるが、モビリティ・マネジメントの知見を活用し、バスを使ったライフスタイルを提案する取組みを行うことで市民のバスに対するイメージが変化し利用も増加する成果が得られている点が優れているため、優秀賞を授賞することとした。

 



【奨励賞】道南バス株式会社、室蘭市
「官民一体で進める路線バス利用促進と環境まちづくり」

(概要)
 室蘭市では平成30年3月に、地域住民や交通事業者、官公庁などの関係機関が参画する「室蘭市地域公共交通活性化協議会」を設置し、平成31年3月に「室蘭市地域公共交通網形成計画」を策定した。それに基づき、市内路線バスを運行する道南バス株式会社と室蘭市が連携し、公共交通の維持確保と地球環境への配慮の観点から、公共交通への転換を促す以下の取組みを実施している。

小学生を対象とした交通エコロジー教室を開催し、路線バス車両を用いたハイブリッドバス体験や乗り方教室による環境教育を実施
マイバス時刻表サービスや、道南バスによるふれあいパス、ワンコインパスの発行によって高齢者の外出を促し健康を増進
バス路線と周辺施設を記載した「バスマップむろらん」の作成・配布
「むろらんノーマイカーデー」を定め、室蘭市職員は月1回以上を目標に公共交通機関を利用した通勤を実施
平成27年に室蘭市が策定した「室蘭グリーンエネルギータウン構想」に基づき、移動式水素ステーションや公用車両への燃料電池自動車の導入、一般住宅へのエネファーム設置助成など、街中での地球環境意識の啓発

(授賞理由)
 モビリティ・マネジメントや公共交通利用促進、水素エネルギーの推進といった様々な取組みを展開している。これらを総合的にまとめるには至っていないが、幅広い施策に自主的に取り組んでいる点は評価できる。今後、施策間の連携によって相乗効果が発揮され、地域の意識を高めていく効果の発現につながっていくことを期待し、奨励賞を授賞することとした。

     
     
     
 
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