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  交通エコロジー・モビリティ財団 交通環境対策部
第8回 EST交通環境大賞の審査結果
   

【大賞 国土交通大臣賞】金沢市
「交通によるまちづくりの実現に向けて」

(概要)
 石川県金沢市では、自動車に過度に依存しない歩行者と公共交通を優先するまちづくりを目指し交通政策に取り組んでおり、平成19年には「新金沢交通戦略」を策定し、歩行者及び公共交通優先のまちづくりの推進や北陸新幹線の金沢開業を見据えた二次交通の充実等、様々な交通まちづくりに関する事業を進めてきた。
 金沢市環境基本計画年次報告書(平成27年度実績)によると、2000年に103万t-CO2だった金沢市のCO2排出量(運輸部門)は、2013年には89万t-CO2まで削減されており、公共交通の利用促進と快適に歩ける金沢らしいまちづくりの推進を図っている。
 また、北陸新幹線の金沢開業の効果を最大限に活かし、交通によるまちづくりを実現するための具体的な行動計画として、新金沢交通戦略に続く「第2次金沢交通戦略」を平成28年3月に策定し、公共交通の優先度・利便性の更なる向上や公共交通ネットワークの再構築等に取り組んでいる。
 これまで取り組んできた代表的な取組は以下の通りである。

渋滞防止・環境向上の観点から、中心市街地へのマイカー流入を抑止するため、バス専用レーンやバス接近表示システム、パーク・アンド・ライド施策を展開
公共交通の空白地域・不便地域の解消等のため「金沢ふらっとバス」(コミュニティバス)を運行
金沢の玄関口である金沢駅東口において、公共交通へのスムーズな案内を行うために、「交通コンシェルジュ」を設置、中心市街地のバス停にも案内板を設置し、ストレス無く移動できる環境づくりを推進
自転車優先の施策として、走行指導帯の積極的整備のほか、連動して公共レンタサイクル「まちのり」事業を展開
未来を担う世代への交通環境学習 及び 公共交通乗車体験等の意識啓発を継続

(授賞理由)
 公共交通を優先するまちづくりを目指すとともに、都市の規模や個性に応じた地域のより良い交通環境の形成に取り組むなど、交通まちづくりの視点でハード・ソフト両面から総合的に交通環境対策に取り組んでいる点を高く評価した。交通コンシェルジュ等の分かりやすい公共交通への取組やバス専用レーンの導入及び拡大、パーク・アンド・ライドの取組が市内中心部へのアクセス性向上や中心部の混雑緩和に寄与している。また、公共レンタサイクルや自転車利用環境向上の取組が中心市街地の活性化に貢献している。これら一連の総合的な取組は、まちづくりと一体となったESTの取組として全国の自治体の参考となることから、大賞を授賞することとした。



【大賞 環境大臣賞】近鉄グループホールディングス株式会社
「近鉄グループの連携を活かした総合的環境取組み」

(概要)
 近鉄グループホールディングス株式会社では、持株会社化以前より「近鉄グループ環境情報交換会」を開催し、環境に配慮した活動を進め、持株会社化を行った平成27年には、「近鉄グループ中期環境目標(平成27年度〜平成32年度)」を策定し、グループ全体で環境保全の取り組みを進めている。また、中期環境目標に基づく単年度のグループ環境目標を定め、平成27年度の目標は達成するとともに、鉄道事業における平成27年度の電力消費量は平成7年度に比べ22.2%、単位輸送あたりのエネルギー消費は平成2年度に比べ15.3%の削減を実現している。具体的な主な取り組みは以下の通り。

【鉄道事業の取組み】
VVVF車両やアルミ・ボルスタレス等の軽量車両の導入を推進し、平成27年度の省エネルギー車両比率は60%を超えている。
大阪阿部野橋駅を中心とした駅施設において、LED照明等、高環境性能機器への設備更新を推進している。
既存車両をリニューアルし、更に、地元の竹集積材を内装に使用した観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」を製造し、廃棄物を削減している。また、車両自体の高付加価値により、公共交通の利用の促進をしている。
乗車券・特急券のリサイクルを長期にわたり実施している。
日本初の設備である「シカ踏切」の導入により地域の生態系との共生を図るほか、沿線への植樹など地域の環境美化に貢献している。
【その他の取組み】
電気バスやハイブリッドバス等の省CO2車両の導入を進めている。また、バス・タクシー事業では、燃費向上に取組み、グリーン経営認証を取得しており、タクシー事業では永年表彰を受けている。
分かりやすい環境情報開示や教育・啓発、環境に配慮した商品開発にも積極的に取組み、国際的にも高い評価を得ている。
大阪阿部野橋駅と一体化した環境性能の高い超高層複合ビル「あべのハルカス」を建設するともに、近隣公園管理運営事業に参画し、地域の賑わいを創出している。

(授賞理由)
 「近鉄グループ中期環境目標」を設定しグループ全体で環境保全を推進しており、大阪阿部野橋駅を中心としたグループの総合力を活かしたハード・ソフト両面からの様々な交通環境対策の取り組みや、鉄道事業での目標を上回る環境改善量の達成を高く評価した。車両や駅舎の省エネルギー化、公共交通の利用促進により低炭素化社会へ貢献するとともに、沿線での植樹活動など地域貢献にも取り組んでいる。また、沿線住民向けの鉄道イベントでの環境ブースの出展や、鉄道環境クイズの公開など、環境教育・啓発にも積極的である。更に、カーボンオフセット事業に参加するなど、環境を重視する会社風土の醸成も進んでいる。これら幅広く総合的に取り組む姿勢は、全国の事業者の参考となることから、大賞を授賞することとした。



【優秀賞】松江市公共交通利用促進市民会議
『とってもお得バス利用事業』『松江市一斉ノーマイカーウィーク』ほか」

(概要)
 松江市公共交通利用促進市民会議では、平成18年度に策定された松江市公共交通体系整備計画に基づき平成20年に設置されて以降、「市民・企業・交通事業者・行政」の協働により、運行の効率化やサービスの向上、利用促進等の取組みを地道に取り組んできた。

【松江市一斉ノーマイカーウィーク】
 平成18年度から行政職員や事業所を対象として実施してきたモビリティ・マネジメント(MM)を、平成21年から松江市全体の運動に広げ、「クルマからのCO2排出量の削減や交通渋滞緩和による交通円滑化、バス・鉄道等の公共交通利用促進にむけて、過度なクルマ利用を見直すきっかけづくり」として開始した。
 市内事業所へ「呼びかけ型」から「コミュニケーション型」に提案方法を変え、実際に毎年数十社を訪問し、その事業所でどのような形でノーマイカーができるのかを提案している。その結果、毎年参加企業は100を超え、平成27年度は112社が参加し、ノーマイカーに取り組んでいる。
【とってもお得バス利用事業】
 使用済みのバスカードを活用した取組みで、協賛店利用時に使用済みバスカードを提出すると、割引やワンドリンク無料など様々な特典が受けられる。バス利用者は、この特典が受けることができ、協賛店は、同事業のリーフレットに記載されることでの宣伝・集客効果、さらには、既定の券面金額分を集めることで、路線バス車内の広告枠が使用できる。
 また、バス事業者は、利用促進やノーマイカー運動の取組みが拡大するなど、利用者・協賛店・バス事業者の双方に利益がある仕組みになっている。

(授賞理由)
 補助金や自治体の財源に頼らず、9年にもわたり取組を継続している。その間、ノーマイカーウィークは年々参加事業所も増加し、市民の認知度も非常に高まり、MMの取組は地域に定着しているといえる。様々な関連団体や機関が長年にわたり連携して取り組み、交通渋滞の改善など効果が着実に表れている点が評価された。


【奨励賞】一般社団法人でんき宇奈月プロジェクト
「宇奈月温泉における低速電気バスの運行による地域交通づくり」

(概要)
 富山県黒部市宇奈月温泉では、黒部峡谷の玄関口・宇奈月温泉を世界有数の山岳・温泉エコリゾートとすることを目標に、民間団体(一般社団法人でんき宇奈月プロジェクト)が主体となって再生可能エネルギーの地産地消による地域の活性化を進めている。
 その足掛かりとして、地域の天然資源を活用した小水力発電と、そこから得られた電力を利用する公共バス(低速電気バスEMU[エミュー])を走らせる域内交通事業を連携し、ガソリン使用量の削減(低炭素型社会の形成)と、温泉街の観光地としての魅力向上に取り組んでいる。
 EMUは、歩行者の回遊を妨げない時速19km以下で走行し、温泉街のルート上どこでも乗り降り自由、無料で乗車できる。楽に移動でき、ゆっくり楽しんでもらうことで観光客の滞在時間が増し、温泉街の活性化に貢献している。EMUの導入により、歩行者中心の安全なスローモビリティー空間の創出と同時に、排気ガス放出のない清涼な低炭素型人車共存空間の実現を目指すシンボル的存在となっている。
 狭い範囲ながらも海外の化石燃料に依存しない交通モデルを示すことで、他地域での導入モデルとして有効である。また、本取組みを題材として、地域の小学校・高校・大学などの授業と連携した環境教育や全国各地から多くの視察者が訪れている。

(授賞理由)
 地域資源から得た再生可能エネルギーを利用して走る低炭素な交通事業と観光地の魅力向上の両立を図る取組はオリジナリティがある。情報誌等で取組が紹介されるなど注目度は高く、視察者も多く訪れるなど、他地域の参考となっている。温泉街を走る低速バスはすでに地元では定着しており、規模は小さいが地域に根ざした取組として着実に推進している点が評価された。


【奨励賞】姫島エコツーリズム推進協議会
「新たなモビリティの普及の研究と事業化」

(概要)
 姫島エコツーリズム推進協議会では、観光客が周遊するためのタクシーやレンタカーがない姫島において、環境に優しい超小型モビリティや電気自動車を導入し環境保全と観光振興を目的にゼロエミッションな村づくり「ひめしまモデル」の確立と地域活性化に取り組んでいる。
 この取り組みは国土交通省の超小型モビリティ導入促進事業の採択を受け、公道走行を可能とする認定制度を活用して2人乗りのニューモビリティーコンセプトを5台導入し、レンタカーとして観光客に貸し出しを、平成27年度にはニューモビリティーコンセプトを2台追加導入した。
 また、姫島村の協力により、電気自動車活用事例創発事業の採択を受け、5人乗りの電気自動車を姫島村より貸与され導入し、家族連れやグループ客など2人乗りニューモビリティーコンセプトでは対応できなかった問題点も解決できている。
 平成28年度は高齢者向けに低速小型車両である電動カートの実証実験も開始し島内での新たな交通手段としての可能性を検証している。目的用途に合わせて選択ができる複数種類の電気自動車を導入している点が独創性である。

(授賞理由)
 様々な電気自動車をショーケース的に導入し、目的用途に合わせて選択可能にしている点はオリジナリティがある。8年にわたり取組を継続しているなか、導入台数が年々増え、利用者数も増加し、取組の認知度も向上しているなど、効果をあげながら着実に取組を推進している点が評価された。


【奨励賞】特定非営利活動法人アースライフネットワーク
「ふじのくに『エコde 安全』ドライブ促進コンソーシアム事業」

(概要)
 特定非営利活動法人アースライフネットワークでは、静岡県、県内の各種自動車関連団体(静岡県自動車会議所、日本自動車販売協会連合会静岡県支部、日本自動車連盟(JAF)静岡支部、静岡県指定自動車教習所協会)とともに「ふじのくに『エコ de 安全』ドライブ促進コンソーシアム」を構築し、共同でエコドライブ事業を行っている。
【講習会の開催】
 特に、自動車販売店の従業員を対象に、同僚の従業員や一般ユーザーへの「伝え手」を育成するための、実技を含めた講習を行っている。また、OJT講習として、各販売店を会場として一般の顧客へのエコドライブ講習を行うなど、事業に広がりを持たせている。
【エコドライブの周知】
 「ふじのくに交通安全県民フェア」などのイベントにPRブースを出展し、エコドライブのポイントをまとめた「エコドライバー宣言カード」を集めているほか、教習所協会の協力を得て各教習所でエコドライブについて周知している。
【エコドライブキャンペーンの実施】
 エコグッズを賞品としてエコドライブの実践を呼びかけ、燃費計測に協力いただいている。エコドライブ講習会は計15回開催し159人の方に受講いただいている。受講者を講師としたOJT講習会は計9回開催し、86人の方に受講いただいている。また、エコドライバー宣言等には1,460人の方に協力いただいている。

(授賞理由)
 自動車販売店の従業員を対象に「伝え手」としてエコドライブ講習を実施し、自動車販売の顧客にエコドライブを実効的に普及させていく仕組みはオリジナリティがある。講習受講後の調査で8割以上がエコドライブを継続できているなど、一定の環境改善効果をあげている。コンソーシアムを構成する各団体それぞれが強みを活かして役割を分担し、地域に根差して継続的に取り組んでいる点が評価された。

     
     
 
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