【奨励賞】株式会社IHI、福島県相馬市
「国内初 コミュニティバスへ再エネ由来のe-methane供給」
(概要)
IHIと相馬市は連携して「そうまIHIグリーンエネルギーセンター(以下、SIGC)」を運営しており、地域再エネの地産地消、さらにはCO2フリーの循環社会の実現に向けて取り組んでいる。2023年よりSIGC内の太陽光発電所の余剰電力を利用して製造したグリーン水素と施設内外から調達したCO2を合成してe-methane(グリーンメタン)を製造し、市内の高齢者や災害市営住宅居住者向けのコミュニティバス「おでかけミニバス」の燃料として供給している。相馬市民の足として地域交通を支える「おでかけミニバス」へカーボンニュートラル燃料であるe-methaneを供給することで、ガソリンでの運行と比較してCO2排出をゼロ、ガソリンでの運行と比較して低いNOX排出を達成している。
e-methaneは既存の天然ガスインフラが利用でき、水素を燃料とした場合の水素ステーションの建設費やランニングコストに対してアドバンテージがあるだけでなく、本事業では、「おでかけミニバス」として10年以上走行してきた現役の「ハイエース」をバイフューエル車に改造して運用し、さらにディスペンサー(燃料供給設備)も27年以上使用して廃棄処分予定であったものを活用しており、新エネルギーを使うための投資を削減するだけでなく、車両製造・ディスペンサー処分に伴うCO2排出の抑制にもつながっている。
日本で初めて国連規格(UNR110)ガス容器を適用したケースであり、さらに太陽光由来のe-methaneを使って車両走行させた点も日本初のケースである。
また、e-methaneによる車両走行も日本初であり、水素に比べて既存の天然ガスインフラが利用可能である点で、水素と比べてのアドバンテージを実証している。今後は、環境価値移転、相馬市内でのCO2フリーの循環型社会の構築など、更なる先進的な取組みを検討している。
(授賞理由)
本取組みは、人工的にe-methaneを製造し、それをコミュニティバスの燃料として走らせている。e-methaneは既存の天然ガスインフラが利用可能で、e-methaneを使うことで水素に比べて初期投資やランニングコストといった部分での経済性のメリットがあり、さらに自動車燃料だけでなく多用途であることが特徴である。
余剰電力の関係で現状は、「おでかけミニバス」の6台中1台がバイフューエル車として運行されているにとどまっているが、自動車燃料の脱化石燃料の新たな一助となる独創的な取組みであることを評価し、今後の更なる普及・発展を期待して、奨励賞を授与することとした。
【奨励賞】岡山県備前市、(旧)NPO法人スマイル・つるみ
「EVを使った住民主体による地域内移動サービスの全市展開」
(概要)
2020年10月、備前市鶴海地区で住民同士の支え合いサービスを提供する「NPO法人スマイル・つるみ(以下、NPO)」が公共交通空白地有償運送の許可を受けて地域内の移送サービスを開始した。車両は地球環境と高齢者が安全に乗車できる「グリーンスローモビリティ」を備前市が環境省の補助制度を活用して購入し、NPOに無償貸与した。最高時速19q、ドアなし等の車両特性により近距離の移動に制限されたものの、利用者の自宅と最寄りの商店、クリニック、バス停等の拠点を結ぶ「枝線」の役割を担った。備前市は運行主体に対する補助制度を創設してNPOの活動を支援したが、運転者の高齢化や後継者不足等の事情により、NPOは2023年9月に運行を終了、以降は任意団体として地域住民の交流の場づくりの活動を続けている。
その後、備前市では、「地球環境への配慮」「住民主体による地域内輸送」のマインドを継承し、EV車両10台による「デマンド型乗合タクシー」のサービスを市内全10地区で展開した。
先行のグリーンスローモビリティに比べて移動範囲は広がったものの、タクシーとの競合を避けるため、原則として自宅のある小学校区(2024.12から居住小学校区と備前市が指定する隣接の2小学校区)にある商店、医療医機、駅、バス停等の拠点を結ぶ「枝線」の移動手段として運行している。また、デマンド型乗合タクシー車両、市営バス車両、バス停留所のデザインを統一してブランディングを図り、運賃はデマンド型乗合タクシー、バスともに一人一乗車200円であるが、マイナンバーカードを提示することでデマンド型乗合タクシー、市営バスともに無料としている。
(授賞理由)
本取組みは当初、NPO団体がある一定地域に限定してグリーンスローモビリティを活用して住民の足として走らせていたが、NPO団体が解散後、備前市がこれまでの取組み姿勢を継承し、EV車両を10台購入し、住民に委託してデマンド型乗合タクシーとして走らせているものである。
また、このデマンド型乗合タクシーで市内全地域をカバーできるように地域分けするとともに、タクシー事業者の営業に配慮して目的地を限定する等、公共交通網全体の調和への配慮が施されている。またデマンド型乗合タクシーの車両、市営バス車両、バス停留所のデザインを統一してブランディングされている点は非常に特徴的である。
交通空白解消と環境負荷低減の両立を目指した取組みとして発展が期待でき、他地域の参考にもなることから、奨励賞を授与することとした。
【奨励賞】九州電力株式会社、鹿児島県知名町、おきえらぶフローラル株式会社
「EVバスの導入・活用による離島の脱炭素化に向けた取組み」
(概要)
九州電力株式会社(以下、「九州電力」)では、カーボンニュートラルの実現に向けた取組みの一環として、企業・自治体等のEVバスの導入・運行に必要なバス車両や充電設備、エネルギー管理システム、各種サービスをパッケージとして定額制(サブスクリプション)にて提供する、「九電でんきバスサービス」事業を開始している。
鹿児島県の離島、沖永良部島にある知名町では、2022年4月に環境省の脱炭素先行地域に選定され、「ゼロカーボンアイランドおきのえらぶ」として様々な事業を展開している。知名町は、CO2削減と移動手段確保、燃料費の高騰に対応し、公用車のEV化やEVバイクの導入を推進している。
一方で、離島であるが故に電力系統が独立しており再生可能エネルギー導入量に制約があり、再生可能エネルギーの発電量が多くなる日中に電力需要を増やすためには、EVバス等による地域交通の脱炭素化が有効な取組みの一つである。しかし、高価な車両費用や離島であるが故に走行距離が比較的短く、ディーゼルバスと比較して運用の経済性を担保しにくいこと等が、導入のハードルとなっていた。
そこで九州電力と知名町が連携し、交通環境対策の一環として、知名町とおきえらぶフローラル株式会社が保有・運行するホテル利用客送迎用のディーゼルバスのEV化に取り組んだ。電力供給においては九州電力のサービス「九電でんきバスサービス」を活用し、2024年4月に運用を開始した。
(授賞理由)
本取組みは、移動手段の確保とCO2削減、燃料費の高騰が課題となる中、電力会社と協力して町内のホテル送迎バスにEVバスを導入したものである。
元々知名町では、公用車のEV化やEVバイクの導入を進めているところであるが、「九電でんきバスサービス」を活用し、町内のホテル送迎バスにEVバスを導入して運用している。
現在のところ、九州電力と知名町による取組みはホテルの送迎バスだけであるが、今後の町内車両のEV化、さらには他地域への波及も期待して、奨励賞を授与することとした。
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