ご意見・お問い合わせ
サイトマップ
プライバシーポリシー
EST普及推進事業とは ESTを目指して ESTデータベース ESTリンク集
* * *
*   *
  交通エコロジー・モビリティ財団 交通環境対策部
第2回 EST交通環境大賞の審査結果
   

【大賞】松山市
「まつやまエコ交通チャレンジ!プロジェクト」

(概要)
 松山市は都市機能が比較的都心部に集約され、松山城や道後温泉といった観光資源にも恵まれ、都心部では地元交通事業者により路面電車も運行されている。このような利点を活かすべく、松山市では、環境に配慮したコンパクトシティを実現するため、「歩いて暮らせるまちづくり」として、自転車・歩行者が安心して通行できる空間づくりや、公共交通の充実等の取り組みを、行政と交通事業者が一体となって実施してきた。
 具体的には、@自動車交通の円滑化、A自転車の利用促進、B公共交通の利用促進を柱として、さまざまな対策を行ってきた。
 ESTモデル事業においては、低公害バスの導入を進めるとともに、交差点改良、バスと鉄道の結節性を高める駅前広場の整備とフィーダーバスの導入、路面電車への低床式車両の導入、郊外電車・バス・市内電車・タクシー(伊予鉄グループ)において1枚のカードで支払いが可能となった交通系ICカードの導入等により、公共交通の利便性を向上させ、利用者の増加を図った。また、郊外のバス停に駐車場を整備し、そこから中心部まではバスを使用してもらうことにより自動車交通量を削減した。
 ソフト施策として、メディアでのCMや、公共交通体験イベントの実施、小学校での総合的な学習の時間において、「交通」と「環境」の問題を取り上げることにより、低年齢時から公共交通に興味をもってもらう環境教育も継続して行っており、市内小学校で毎年多くの児童が参加し実施している。合わせて、700名以上の住民を対象に、GPS機能付き携帯電話を活用したトラベルフィードバックプログラム(TFP)を実施し、交通行動の見直しを図ってもらうモビリティマネジメントも実施した。
 さらに、道路空間再配分による自転車走行空間の確保や、自転車の走行体験イベント・ワークショップ、またエコ通勤実証実験等を行うことで、環境配慮と健康増進を目的とした自転車の利用促進にも取り組んでいる。
 このように、松山市では、自動車に過度に依存しない交通体系の構築を目指し、総合的な交通対策の取組を行っている。

(受賞理由)
 バスや鉄道などの公共交通を中心にした総合的な取組みを、環境を前面に押し出しつつ、継続に困難を伴う地方都市で継続的に実施し、その取組みが毎年発展している。特に、新しいツール(GPS機能付き携帯によるTFP)の導入や子供達を対象とした交通環境教育など、将来を見据えて持続可能性にチャレンジする姿勢が評価できる。



【優秀賞】帯広駅モビリティ・センター運営協議会
「帯広市における地域を巻きこむ交通環境改善」

(概要)
 帯広市は、環境モデル都市としての認定を受け、全市をあげて多様な分野における二酸化炭素の削減、低炭素社会の実現に向けた取り組みを展開している。
 とりわけ、当協議会が発足した平成19年度より開始した廃食油(てんぷら油)の回収と、これを原料としたBDF(Bio Diesel Fuel)の路線バスへの活用という一連のサイクルは、市民からの広い賛同を得ることができた。これには、路線バス全車両内(平成19年時点:約150台)に回収ボックスを設置するという国内初の取り組みが、結果的に良いアピールとなったとも考えられる。その効果もあり、現在ではバス車内以外にも、市内に80箇所以上の回収拠点が設けられ、年間の回収量は約100,000リットル近くに及び、住民を巻き込んだ地域内エネルギー循環、持続可能な交通環境の形成に寄与するプロジェクトへと成長した。
 さらに、平成21年度にEST普及推進地域の認定を受け作成した「おびひろバスマップ」を市内全世帯約80,000世帯に配布したところ、次年度には新聞社が毎年発行するバス路線図に採用されるなど、効果的な地域への浸透を実現している。
 また、平成19年度より継続的に取組んでいる「出前講座」は、行政・バス事業者・民間事業者(廃油回収・BDF製造会社)といった多様な主体が連携することで、交通と環境に関する座学から、BDFバス車輌の試乗まで豊富なメニューの提供を可能にした。現在は、当初対象としていた小学生に加え、中学生、高齢者と幅広く開催され、平成21年度末時点で参加者は1,906人(小学校延べ20校、中学校延べ2校、高齢者学級1回)にのぼっている。
 平成22年度からは、日常でも観光時でも低炭素な移動を促進することを目的に、公共交通やレンタサイクル等を活用した移動や観光プランを企画・発信・実施する「エコバスセンター『りくる』」を再開し、今後の多様な活動の拠点となるべく、各種取り組みのブラッシュアップや人材育成を行っている。

(受賞理由)
 ESTや交通環境対策は、交通面から取組みを開始することが多いなかで、環境面からアプローチした点で、本事業はオリジナリティがある。また、天ぷら油の回収量が多く、市民に浸透したBDF活用の取組みとして貴重な成功事例である点も評価できる。



【優秀賞】大丸有・神田地区等グリーン物流促進協議会、大丸有地区・周辺地区環境交通推進協議会
「大丸有地区等におけるグリーン物流と環境交通の総合的な取り組み」

(概要)
 大丸有地区では、平成12年度からグリーン物流の具体化に向けた取り組みが継続して実施されている。平成13年度に実施した社会実験の検証を介して、平成14年度から丸ビルでの館内縦もち共同事業が具体化し、その後、大丸有地区内にとどまらず全国に波及している。その延長線上として、大丸有・神田地区等の交通環境の改善、地球温暖化対策及び都市活動を支える物流事業の経済性の向上等に資する広域共同集配送事業を軸とする都市内物流対策に総合的に取り組み、事業の本格稼働に向けた検討、調整を行うことを目的とする「大丸有・神田地区等グリーン物流促進協議会」を位置づけ、平成20年8月に設立し、活動してきた。低温貨物共同配送事業は、そのような流れの中で、平成22年9月に実証事業を具体的にスタートし、平成24年4月からの実運送の開始を目指し、実証事業への参加者を増やすべく多面的なモニタリングや交渉等を行っている。
 一方、大丸有地区・周辺地区環境交通推進協議会は、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)およびその周辺地区において、「誰もが身近に見られる、体験できる環境交通」の構築を目指し、「環境モデル都市・千代田」の実現に寄与することを目的に、平成21年7月に設立され、地域で実践できる環境交通推進に関する事業を総合的に実施してきた。そのうち、EVを活用したコミュニティタクシーは平成22年3月から実運行が開始されている。また、自転車利用の促進と道路空間の有効活用(ハード、ソフト施策)及びEVの広域的利用促進システムについては現在継続して実証事業や調査研究を実施している。

(受賞理由)
 大手企業が土地を高度利用する業務街の利点を最大限に活かし、国内事例が少ない館内縦もちの共同配送など物流面の環境配慮行動への取り組みを行いつつ、循環バスやコミュニティタクシーの導入及び自転車利用の促進などに総合的に取り組んでいる。各取組みも非常にユニークで、地区交通のモデルとして優れていることから評価できる。


【奨励賞】横浜カーフリーデー実行委員会
「横浜におけるカーフリーデーの実施」

(概要)
 毎年、世界の1000都市以上が参加して行われるヨーロッパモビリティウィーク&カーフリーデーは、1日あるいは1週間、車中心の道路空間を歩行者・自転車・公共交通のために再配分した憩いの空間を人々に体験してもらい、地域の歴史・文化・その他の地域資源を再発見・再確認し、ライフスタイルの見直しを通じた地域活性化、持続可能な地域づくりに繋げる取り組みである。さらに、これを実行する過程で、様々な分野のネットワークが形成される。実行委員会は、日常的に多様な協働を生みだし、横浜の街を創造的な環境都市へと転換させることを目的に、毎年9月22日の世界カーフリーデーと連帯する形で、2004年からカーフリーデーを実施している。2010年で7回目を数え、50〜80の団体が参加し、1万5千人から3万人もの来場者があり、市民主導では横浜最大の催しに発展した。2010年は、会場の日本大通りに横浜を走る路線バス10社の車両10台を並べ、公共交通の大切さをアピールした。横浜カーフリーデーは、市民団体が中心となって、行政と横浜市内を走る路線バス事業者の全員が参加するという、全国でも例がない市民・事業者・行政の3者協働の成果として継続している取り組みである。

(受賞理由)
 横浜という大都市において、市民団体主催で7年連続で多くの団体が参加するカーフリーデーを開催している。開催期間(短期間)のCO2削減効果は少ないものの、ライフスタイルの見直しを市民に訴える啓発イベントとしてのカーフリーデーの理念は、中長期的な視点でCO2削減に向けた効果を発揮することが期待できる点で評価できる。


【奨励賞】金沢大学、北陸鉄道株式会社、金沢市
「金沢バストリガー協定締結によるバス利用促進施策」

(概要)
 金沢市では、「バストリガー方式」を導入して公共交通の利用促進を図っている。この方式は、交通事業者と利用者が合意(バストリガー協定の締結)の上で、バス運賃や路線の新設・延長などを決定するもので、「新規取組に関する採算ラインを設定し、それを下回った場合は取組を止めることができる」というものである。トリガー(引き金)の動きになぞらえ「目標が達成できなければ元に戻す」ということをいわれとしているが、公共交通活性化の「引き金」となって欲しいという思いも込められている。
 このバストリガー方式は、本格的なものとしては全国初の導入である。交通事業者にとっては、事業展開の実効性を高めるとともに、期待した効果が得られなかった場合の責任を利用者と分け合うことによるリスクの軽減がメリットとなり、一方、利用者にとっては、積極的にバスを利用するという責任を担う代わりに、利便性の向上が実現される。努力・責任・リスクを利用者と交通事業者の双方で担いつつ、双方に利点がある「 win win の関係」により成立している。市が協定締結を仲介する要件としては、「路線の新設・延長、特定区間の運賃の引き下げなど、利便性向上に資する取組である」、「事前に設定した採算ラインを満たすことがある程度見込まれる」、「金沢市内の取組である」という3項目が満たされていることとしている。
 金沢大学地区バストリガー協定は、平成18年2月に金沢市の仲介により、金沢大学と北陸鉄道の間で締結され、同年4月から実証実験として運行されている。協定の具体的内容は、北陸鉄道は170〜200円であった金沢大学〜周辺地域間のバス料金を100円に引き下げて利便性を向上させ、金沢大学は目標利用者数を達成するよう学生のバス利用促進に努力するというものである。協定導入以降の4年間(平成18年度〜平成21年度)は、いずれも大きく目標を上回る利用者を実現し取組を継続させている。産学官の協働により公共交通の利用促進を実現するとともに環境改善や交通安全にも非常に大きく寄与している。

(受賞理由)
 EST実現における1つの重要な要件である公共交通活性化のためのアイデアとして興味深い。現在は大学のみであるが、企業等との協定が締結できれば、今後の発展が見込まれる。金沢市の仲介により、金沢大学が様々な利用促進策を講じ目標利用者数を達成することで、路線バスの運賃を低い水準に抑え続けていることが評価できる。

     
     
 
*   *
 
*