【大賞 国土交通大臣賞】小豆島地域公共交通協議会
「環境にやさしい小豆島の持続可能な公共交通再生への挑戦」
(概要)
小豆島は面積153.30km2で人口2万8千人を有する大きな離島で、空路はなく、本土や四国とを繋ぐフェリー、島内の路線バス、超小型モビリティを含む電気自動車やシェアサイクルを含む自転車といった交通手段が存在し、総合的な交通体系が構築されている。 小豆島では、島内路線バスを運行する会社が経営難を理由に路線バス事業からの撤退を表明したことを受け、路線バスの維持存続に向けて小豆島2町を筆頭株主とした民間事業者等を含む島民出資によるバス会社が設立された。しかし高額な運賃などの問題から利用者数は減少し、負のスパイラルに陥った状況にあった。 小豆島地域公共交通協議会では、持続可能な公共交通網の形成を目指した小豆島地域公共交通網形成計画を策定し、島の新たな拠点となる新病院・新高校の整備や瀬戸内国際芸術祭による交流人口の拡大等、島内の周辺環境が大きく変化する機会に合わせて、平成28年3月から移動の足となる路線バスの大胆な運賃設定を伴った抜本的な路線再編といった以下に示す取組を実施した結果、バス利用者の大幅増を実現した。
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新たな拠点となる病院の開院や高校の開校等に併せて、協議会で路線バスの抜本的な路線の再編の実施。 |
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バス運賃の片道最高1,180円から上限300円への見直しや、高校へのバス通学者を対象とした通学定期助成制度の創設。 |
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インバウンドの増加等、島外需要も見込めることから、フリー乗車券を従来の半額として、来訪者の利便性向上と周遊性を確保。 |
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駐輪場、シェアサイクルとの連携、インバウンド観光客向けの時刻表等による使いやすいバス停の整備。 |
(授賞理由)
離島独自の総合的な交通体系が構築されており、超小型モビリティやシェアサイクル等の環境負荷の少ない交通手段を導入し、観光客や住民に普及を図っている。路線バスの維持存続に向けて、島の新たな拠点(新病院・新高校等)の整備に合わせて、行政、民間事業者、島民による出資や運賃改定、路線再編等を実施し、通勤通学を狙った利用定着を図り、使いやすいバス停を整備したこと等に伴い、大幅に利用者が増加した点を高く評価した。 小豆島での取組は、離島交通での環境配慮のあり方や路線バスの維持存続に向けて、全国の離島や地域の足を考える方々の参考となることから、大賞を授賞することとした。
【大賞 環境大臣賞】湊地区地域活性化協議会・会津若松市
「再エネとICTを活用した中山間地域で持続的に支えあう交通づくり」
(概要)
会津若松市では、地域公共交通網形成計画を策定し、地域主体コミュニティ交通の構築や路線再編、モビリティマネジメントの推進等の様々な取組を進めている。また、スマートシティ会津若松の推進を掲げ、様々な分野でICTを活用したまちづくりを進めており、交通分野では、GIS活用によるバス路線再編やバスロケーションシステムの導入、スマートバス停の実証設置など、官民が連携しながら取り組みを進めている。
上記の全市で行っている取組に加えて、市東部の湊地区においては、人口減少を背景としたコミュニティの維持や高齢者の移動の確保等の地域課題を住民が主体的に解決していくことを目的に「湊地区地域活性化協議会」が設立され、主に以下の取組を行っている。
【中山間地域内交通実証運行事業】
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公共交通空白地有償運送の登録や貨客混載等による多用途・多目的での活用を目指し、協議会が市から受託する形式で電気自動車「みなとバス」の実証運行が行われている。 |
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電気自動車は同地区の風力発電所が提供する急速充電施設の電力を無料で利用でき、再生可能エネルギーの地産地消やCO2削減にも繋がっている。 |
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電気自動車は協議会が運営する農産物直売所の集荷にも活用しており、様々な地域活動の基盤となっている。 |
【生活支援システム構築事業】
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インターネットに接続された通信機器をテレビに装着したシステム「みなとチャンネル」は、平成31年2月末時点で397世帯、全世帯の約7割以上に設置されている。 |
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高齢者の安否確認やみなとバスの予約もシステムから行うことが可能である。 |
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紙媒体からデジタルになったことも環境負荷削減に寄与している。 |
(授賞理由)
人口減少を背景としたコミュニティの維持や高齢者の移動の確保等の地域課題に、市、協議会、関係者が連携して取り組みつつ、再生可能エネルギーの地産地消とCO2削減に繋がる運行を目指し、電気自動車が中山間地域の低炭素化と地域の活力維持に貢献している点を高く評価した。電気自動車を効率的に運行するためにICTを活用しつつ、農産物の貨客混載等にも取り組む点も評価できる。 湊地区での取組は、今後、交通分野の地域循環共生圏を検討する上で重要であり、近年増加している中山間地域の課題解決に向けて参考となることから、大賞を授賞することとした。
【優秀賞】大分市
「環境にやさしい交通で にぎわいのあるまちづくり」
(概要)
大分市では、大分駅南土地区画整理事業により大分駅南北駅前広場が整備されたことで、鉄道やバス、タクシーの乗り継ぎが円滑になり交通結節機能が強化されたほか、シンボルロードの整備が行われた。また、同時期に実施された鉄道高架化や駅ビル建設と相まって駅周辺空間が様変わりした。このような中、まちの機能をコンパクトに集約した利便性の高いまちづくりが必要とされ、道路整備と併せただれもが快適に移動できる公共交通ネットワークの構築が求められている。 そこで、平成29年3月には持続可能な地域公共交通網の形成を目的に「大分市地域公共交通網形成計画」を策定し、望ましい公共交通のすがたを明らかにするとともに、市民、交通事業者、行政の役割を明確化し、連携を図りながら主に以下の取組を進めている。
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まちなかでは中心市街地循環バスを運行し、郊外など公共交通の利用が不便な地域では乗合タクシーを運行している。観光地や駅周辺では自動運転車両実証運行を行った。 |
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モビリティマネジメントに取り組み、小学生を対象にバス利用によるCO2削減やバスの乗り方を学ぶエコ交通まちづくり教室を開催している。 |
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平成18年3月に「大分市自転車基本利用計画」を策定し、自転車を活かしたまちづくりを推進している。既存のレンタサイクル事業に加え、シェアサイクル実証実験を行っている。 |
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国際的な自転車ロードレース等を中心としたOITAサイクルフェスを開催し、市民の自転車に対する意識を高めている。 |
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小学生や中学生を対象とした自転車マナーアップ教室を開催している。 |
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条例により、中心市街地を自転車放置禁止区域に指定し、駐輪場を整備している。 |
(授賞理由)
大分駅南北駅前広場が整備されたことで、交通結節点が強化されたほかに、シンボルロードの整備が行われた中、市民、交通事業者、行政の役割を明確化し、連携を図りながら、自転車利用促進等、地球環境への負荷の低減につなげる様々な交通環境対策を進めている。駅前の社会基盤整備、バス等の公共交通ネットワーク、自転車やモビリティマネジメント等のソフト施策を上手く組み合わせて総合的に取組を進めている点を高く評価した。
【奨励賞】豊田市エコ交通をすすめる会
「豊田市における20年以上にわたる交通需要マネジメント施策の継続的展開」
(概要)
愛知県豊田市では、通勤時間帯の道路交通渋滞対策の一環で、平成8年にTDMの勉強会を設立し、企業など民間主導によるTDMの実現を目指してきた。この組織は、豊田市エコ交通をすすめる会に引き継がれ、現在までの20年以上の間、豊田市でTDMを中心とする交通環境対策に継続的に取り組んでいる。
活動としては、会員企業やその他企業へ特定日に公共交通や相乗りなどへの通勤手段の転換を促し、P&R駐車場の確保や複数企業による通勤バスの共同運行、通勤や小学生を対象としたモビリティマネジメントによる行動変容等を組み合わせて実施してきた。また、キャンペーンなどによる市民向けのエコ交通の啓発なども行ってきた。
その結果、公共交通利用者数は継続的に増加し続けるとともに、パーソントリップ調査の結果によると通勤目的の自動車分担率が2001年の79%から2011年の71%へ8ポイント減少するなど、マクロな交通実態を示す指標においても効果が確認されている。
(授賞理由) 時代の変化に合わせて企業に限らず、市民や小学校を対象としたエコ交通の啓発を行うなど、20年以上にわたり継続的に様々な交通環境対策に取り組んできた点とパーソントリップ調査等のマクロな指標においても効果が確認できる点が評価された。
【奨励賞】湖東圏域公共交通活性化協議会
「湖東圏域における複数市町連携による公共交通利用促進と利用者増加に向けた10年間の取組事業」
(概要)
滋賀県湖東圏域(彦根市、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町、以下「1市4町」)では、長年にわたり路線バスの利用者数が減少を続け、路線バスの廃止とさらなる利用者減少、モビリティの喪失といった負のスパイラル状態に陥っていた。
平成20年度から彦根市単独で公共交通活性化協議会を設立し、鉄道、路線バスに加えて予約型乗合タクシーの新規導入による取組を開始した。平成21年度より圏域を拡大し、湖東定住自立圏構想に基づき1市4町が連携して湖東圏域公共交通活性化協議会を設立し、湖東圏域内における公共交通の活性化とネットワーク化を図っている。
具体的な取組として、平成20年度以降、通算29回全戸配布している湖東圏域公共交通ニューズレター等のモビリティマネジメントの実施により、平成23年度以降、湖東圏域の路線バス輸送人員が増加を続けていることに加え、予約型乗合タクシーについても運行エリアを拡大し、運賃施策等の利便性向上策を行うことで利用が増えている。
(授賞理由) 複数市町村が連携しながら10年にもわたって続けられてきた公共交通網整備とモビリティマネジメント等の取組により、路線バス、予約型乗合タクシーの輸送人員が増加し、環境負荷削減のみならず、地域経済の活性化にも貢献している点が評価された。
【奨励賞】災害時公共交通情報提供研究会
「平成30年7月豪雨災害後のリアルタイム交通情報提供システムの構築及び実装」
(概要)
平成30年7月の西日本豪雨後、道路・鉄道の不通等に対応して臨時的に運行される交通サービスをリアルタイムかつ一元的に参照できる公共交通情報の提供を目指して、災害時公共交通情報提供研究会が立ち上げられた。
本研究会の特徴は、地方自治体、スタートアップ企業、学術機関、公共交通事業者等を巻き込んで構成されている点にあり、学術機関、スタートアップ企業の有志がボランティアで情報提供システムを構築し、公共交通事業者がその情報をリアルタイムでホームページ上に公開するという形がとられている点である。
本取組の独創的な点は、広島・島根・東京といった各地に点在する人的資源を有効に活用できるネットワークを確立し、システムの構築から実装まで極めて短期のうちに成し遂げた点にある。自動車から公共交通への転換による混雑緩和や出控えの緩和などに大きく貢献するとともに、代行バスの走行位置情報提供は、市民からの強いニーズに応えて実施期間を当初の予定より延長して実施することとなった。これらのリアルタイム情報提供システムのノウハウをパッケージ化し、広く社会に役立てようとしている。
(授賞理由) これから地球温暖化適応策が重要となるなか、災害時の自動車から公共交通への転換、災害による出控えの緩和などに大きく貢献したことや、これらのシステムのノウハウをパッケージ化し、他地域での展開も検討されている点が評価された。
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