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  交通エコロジー・モビリティ財団 交通環境対策部
第13回 EST交通環境大賞の審査結果
   

【大賞 国土交通大臣賞】T-PLAN株式会社、一般社団法人姫島エコツーリズム
「離島の課題に再エネと小型EVを活用した取り組み」

(概要)
 大分県姫島村は、国東半島の北5kmに位置する一島一村の離島である。現在、村内にバス・タクシー・レンタカー事業者がなく、フェリーで訪れた観光客の島内での二次交通手段の確保が課題となっていた。2014年よりT-PLAN株式会社を主幹企業とした姫島エコツーリズム推進協議会(現、一般社団法人 姫島エコツーリズム)を発足し、環境に優しい小型EVを活用したレンタカー事業に取り組んできた。現在では、取組みをさらに発展させ、1人乗り・2人乗り超小型モビリティ、4人乗り・6人乗り・7人乗りグリーンスローモビリティ、1人乗り電動キックボード等の計29台の多様なEVをレンタカーとして貸し出し、以下の取組みを実施している。

【再生可能エネルギーによるEVの充電を通じたゼロカーボン・ドライブの実現】
2019年より小型EVの車庫に自家消費型の太陽光発電と蓄電のシステムを設置
運行している全てのEVに太陽光発電システムを用いて充電することで、ゼロカーボン・ドライブを実現
【EVを活用した地域住民の移動手段の確保】
EV2台に自家用旅客有償運送の許可を取得し、地域住民の診療所への送迎に活用
グループホームでの外出支援にグリーンスローモビリティを活用
2022年には車いすに対応したEVを導入し、誰もがより利用しやすい環境を整備
【他地域への普及促進】
観光繁忙期以外の時期には、保有しているEVを他地域に貸出して、姫島村内での知見をもとに地域交通や観光交通へのEV普及に向けた実証実験等に技術的な指導等を実施
2022年には、パラオ共和国におけるグリーンスローモビリティ導入の取組みにJICA事業を通じてコンサルティング

(授賞理由)
 様々なEVをショーケース的に導入し、目的に応じた移動手段を提供している独創性や積極的な取組みの推進等を評価して、第8回EST交通環境大賞では、奨励賞を授賞した。
 前回の授賞時からレンタカー事業の拡大を図り、村役場の観光情報でも島の新鮮な空気と開放感を味わえる島内移動手段として位置づけられ、利用件数等が増加している点は、取組みの着実な推進の成果であるといえる。
 その上で、EVの充電にかかる電力を全て再生可能エネルギーとするゼロカーボン・ドライブを電力の自給自足によって実現している点は、脱炭素化の推進の面から高く評価できる。また、地域の移動手段としての定着を図っている点で住民の意識変容にも寄与している。
 EVレンタカーを活用した様々なサービスの提供により、姫島におけるエコツーリズムを持続可能な事業として運営するとともに、長年の実績をもとに国内外のグリーンスローモビリティの普及促進にも寄与していることを評価して、大賞を授賞することとした。



【大賞 環境大臣賞】鹿追町
「『家畜ふん尿由来水素』を核としたESTモデル事業」

(概要)
 北海道鹿追町は十勝平野北西に位置し、町内で約33,000頭の家畜が飼養されている(2022年)。従前、家畜排せつ物は有機質肥料(堆肥)として活用されていたが、飼養頭数の増加とともに家畜排せつ物量も増加し、未熟な状態で農地に施用されることにより、市街地への臭気の問題等、家畜排せつ物の適正処理が課題となっていた。そのため町では2007年よりバイオガスプラントを整備・運営し、家畜ふん尿を適正に処理するととともに、発生するバイオガスを発電等に活用、またバイオガス自動車への活用を進めてきた。このような中、取組みの更なる推進として、以下を実施し、家畜ふん尿由来水素を核としたESTに取り組んでいる。

【バイオガスプラントを活用した水素の製造・供給ラインの整備】
FIT制度適用期間終了後を見据え、実証事業を通じて、家畜ふん尿由来のバイオガスから水素ガスの製造・販売を行う水素サプライ事業を官民連携により商用化
北海道内3ケ所目、かつ道内初となる定置式の水素ガスステーションでの、燃料電池自動車(FCEV)と燃料電池フォークリフトへの水素ガス供給体制を整備
【町内でのFCEVの普及促進】
水素ガスステーションの整備に合わせて、町内に19台のFCEVを導入。そのうち9台は脱炭素化に向けた町の取組みに賛同した地元企業及び住民が導入
更なるFCEV導入に向けて中古車も対象とした町独自の補助を実施
町有バスの小型化・FCEV化に向け、メーカーと共同で実用化に向けた実験等を推進
【脱炭素化の取組みを契機としたモビリティ・マネジメント等の実施】
ゼロカーボンシティ宣言を契機に全庁的に脱炭素化に取り組む体制を整え、そのひとつとして、徒歩・自転車通勤の推進や環境教育、全世帯へのエコドライブ啓発等を実施
自営線マイクログリッドでのコミュニティーエネルギーマネジメントシステム(CEMS)運用により、太陽光発電余剰電力を公用車EV、PHEVの充電に活用

(授賞理由)
 農業が産業の中心の町として、家畜ふん尿由来水素と、交通分野での脱炭素化を関連付けている点は、地域の特性を活かした独創性があるといえる。
 また、自動車が日常的な移動手段として不可欠である状況で脱炭素化を推進するために、FCEVの普及推進に係る利用環境や補助制度を整備している点が特徴的である。FCEV用の水素ガスの製造・供給だけでは事業の持続性が担保できないという課題に対し、工業用水素ガスとしての販路拡大やバイオガスプラントでの余剰熱の活用による新たな農水産物の生産・販売等の展開により、持続可能性に努めている。
 また、水素ガスによる自動車による移動の脱炭素化の推進だけではなく、町役場を中心に徒歩・自転車通勤への転換を図る等の町全体での行動変容を促している。
 地域の産業課題と交通課題の解決にあたって水素ガスに着眼して取り組み、その自給自足による脱炭素化に向け寄与していることを評価して、大賞を授賞することとした。



【優秀賞】世界遺産石見銀山大森地区におけるGSMを中心とした地域内交通整備事業コンソーシアム
「世界遺産石見銀山大森地区におけるグリーンスローモビリティ(GSM)『ぎんざんカート』の運行」

(概要)
 島根県大田市石見銀山大森地区は「石見銀山遺跡とその文化的景観」として、世界遺産に登録されている。登録当初は観光客の急増に対応するために、地区の生活バス路線を増便していた。しかし、騒音・振動等が発生・悪化するなどの問題から、生活バス路線は減便・廃止されていた。世界遺産登録10周年の節目に様々な取組みの見直しを進める中で、地区内の徒歩以外での移動手段確保の取組みとして、ゴルフカートやバイオミニバン等の実証実験を開始した。その後、グリーンスローモビリティを導入し、3ヶ年の実証運行を経て、以下の取組みのもと2022年度より本格運行を実施している。

【地域との対話を通じた最適な移動手段導入に向けた合意形成】
実証実験を積み重ね、取組みの方向性に関して住民・取組み主体間の共通の理解を醸成
地元のキーパーソンが中心となり、地域住民・事業者ときめ細かな対話を推進
【地域主体の組織の立ち上げによる持続的な運営】
実証運行期間中は、大田市が代表団体となり、地域の団体、企業、交通事業者を構成団体とするコンソーシアムがグリーンスローモビリティを運行
グリーンスローモビリティと地区内の観光資源の共通チケットを設定することで、地区内での観光周遊を向上させる仕組みを試行
地域住民の足として利用される地区ではフリー乗降区間を設け、料金体系を工夫
現在は大田市が運行主体として本格運行しているが、地域主体の一般社団法人に、グリーンスローモビリティを移動手段のひとつとして運行を移管し、加えて、地区内の観光資源への来訪者数増と観光収入増を推進中

(授賞理由)
 世界遺産登録直後のオーバーツーリズムにより発生した交通課題を解決するために、地域との丁寧な対話を重ねて、大森地区に合った取組みの検討を進めている点が特徴のひとつである。コロナ禍における観光客の大幅な減少によるアンダーツーリズムも経験した中で、収支率や利用者アンケート結果等の定量的データに基づき、地域に合った持続可能な観光振興の目標を共有し、様々な取組みを推進している。その中で、地域主体の組織が中心となり、グリーンスローモビリティをツールのひとつとして、地域全体の活性化につなげようとしている点が評価できる。
 地方部の観光地における移動手段確保と地域活性化の両面に寄与する持続可能な取組みとして評価し、優秀賞を授賞することとした。


【奨励賞】奥入瀬渓流利用適正化協議会、奥入瀬渓流エコツーリズムプロジェクト実行委員会
「奥入瀬渓流エコツーリズムプロジェクト」

(概要)
 青森県十和田市の国立公園内に位置する国内有数の観光地である奥入瀬渓流では、観光による渋滞や路上駐停車、騒音等が問題となっていた。
 そのため、青森県では、奥入瀬渓流の自然環境保全と、奥入瀬渓流沿いの国道の渋滞解消を目的に、奥入瀬渓流利用適正化協議会を立ち上げ、20年以上にわたりマイカー交通規制を実施してきた。
 その上で、県では奥入瀬渓流エコツーリズムプロジェクト実行委員会を2008年に立ち上げ、以下の取組みを実施している。

奥入瀬渓流内をマイカー以外で訪れる交通手段として駐車場と奥入瀬渓流内の名所を結ぶシャトルバスを運行
自然環境保全と持続可能な観光振興を考えるフォーラムの実施
高校生ボランティアガイドによるエコツーリズムの推進
十和田市内の小中学校を対象にエコツーリズムの取組みの紹介や奥入瀬渓流の成り立ちについての環境教育を行う「『未来の奥入瀬』体験ツアー」の実施

(授賞理由)
 20年以上にわたり奥入瀬渓流の自然環境を保全するための活動に取り組んでいる点が評価できる。コロナ禍では感染拡大防止の観点から中止したものの、2022年度から小中学校を対象とした環境教育の実施、シャトルバスの運行等を再開し、奥入瀬渓流エコツーリズムの活動を絶やさぬように努めている。国立公園内で施設整備等に関する制約があり、かつ国道でのマイカー交通規制という様々なハードルを越えて、実績を重ねて環境保全に貢献したことを評価して、奨励賞を授賞することとした。


【奨励賞】城崎温泉交通環境改善協議会
「地域一体となった『そぞろ歩きルール』の実施」

(概要)
 兵庫県豊岡市に位置する城崎温泉は開湯1300年の歴史をもつ全国でも有数の観光地である。城崎温泉では、温泉街の外湯等を巡る「そぞろ歩き」が観光客の楽しみのひとつとなっている。しかし、温泉街の道路は幅員が狭く、かつ自動車交通の集中や路上駐停車の発生により、交通渋滞が頻発し、安全にそぞろ歩きすることが困難となっていた。そのため、地域住民を主体とした城崎温泉交通環境改善協議会を設立し、関係事業者や県、市、警察、消防などと連携して、以下の取組みを実施している。

地域住民や関係事業者によるワークショップを通じた交通課題解決に向けた取組みの検討
車道の狭窄化や駐停車抑制等の社会実験の実施
社会実験の結果を踏まえ、歩行者が増加する時間帯の路上駐停車の抑制をはじめ、温泉街周辺の駐車場の利活用、交通マナーの向上等を盛り込んだ「そぞろ歩きルール」を地域ルールとして策定

(授賞理由)
 古くからの観光客の楽しみである「そぞろ歩き」に着眼し、交通課題の解決に取り組んでいる点に地域性や独創性があるといえる。取組みにあたって、地域住民を中心とした様々な関係者が一丸となって、方策検討や社会実験を実施し、地域に合った最適な解決策を模索し、その中で法規制ではなく、地域ルールとして、路上駐停車の抑制等の交通課題の解決策を提案している。様々な主体が連携し、交通課題の解決を図ったことを評価し、奨励賞を授賞することとした。


【奨励賞】和歌山県
「WAKAYAMA8∞ 〜サイクリングを活用した、持続可能な観光地づくり〜」

(概要)
 和歌山県では「サイクリング王国わかやま」を掲げ、様々な地域を自転車で巡ることで県内周遊の促進や地域の消費拡大を図る施策を推進している。
 施策の一環で県内全域に総延長800kmをサイクリングの推奨ルートを整備し、「WAKAYAMA800」というニックネームでPRし、無限大のサイクリング旅が楽しめる取組みを下記のとおり実施している。

「WAKAYAMA8∞」(800の“00”を無限大のマークにデザイン)のロゴによるサイクリング施策全体のブランディング化
サイクリストに優しい宿泊施設の認定やサイクルステーションの拡大による受入環境の整備
公式WEBサイト等を通じたサイクリングに関する情報発信
県内各所に設置したチェックポイントを周遊するモバイルスタンプラリーの実施
県内サイクルイベントへの支援

(授賞理由)
 総延長800kmのサイクリングの推奨ルートを整備した事業規模の広さは特徴のひとつである。その上で、800kmというインパクトのある数字を用いて、施策を「WAKAYAMA8∞」のロゴマーク等でブランディングし、Webサイト等で取組みを広く周知している。ブランディングの中で受入環境の整備推進やサイクリングによる地域周遊を促進する取組みの実施等に一体的に取り組んでいる。モバイルスタンプラリーを活用した施策効果の分析等も、他地域での取組みの参考となる好事例であることを評価し、奨励賞を授賞することとした。

     
     
 
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