【大賞】神戸市
「神戸におけるEST(KOBEST)ならびにかしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト神戸」
(概要)
神戸市では、過度なマイカー利用から公共交通への利用転換を図るため、組織を発展させながら対象とする地域の特性に応じて種々の施策を一連の取り組みとして継続的に実施している。
具体的には、平成15年度より行政、NPO等で構成される「神戸市TDM研究会」を発足し、2年間の実証実験(名称:エコモーション神戸)を経て、エコファミリー制度やエコショッピング制度を平成17 年度秋より本格実施に移行した。現在各地で「エコファミリー制度」と類似した施策が実施されているが、神戸発の取組であり本格実施も神戸が初めてである。TDMの取り組みは「都心部」におけるESTの検討へと継続発展し、平成17年度には「神戸市EST推進協議会」を発足し、「おしゃれな神戸らしい環境を優先した生活」の実現に向けて、「神戸EST省エネルギー詳細ビジョン」を策定するとともに、平成19年度には都心部の回遊性向上を目的とした「KOBESTちょいのりバス」や「KOBESTクイズラリー」などの社会実験を中心とした「KOBEST2007」を実施し、平成20年度にはNPOによる「まちあるきツアー」として継承された。
これらの「都心部」を対象とした取り組み地味期を「都心周辺部」にも拡大して「MM省エネルギー詳細ビジョン策定委員会(かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト神戸)」を平成19年度に発足し、「大規模工業団地におけるMMを中心とした省エネルギー詳細ビジョン」を策定するとともに、郊外部の大規模工業団地における従業員を対象としたTFPを実施した。さらに、平成20年度は、このビジョンに基づき、前年度の企業との継続的な施策の検討、他の工業団地でのTFP、住民を対象としたTFP及び学校MMの一環でバスの環境福祉体験授業に用いる教材作成などを実施した。21年度には公共交通の利用促進と利便性向上に向けて、交通ICカードの活用や工業団地での一斉ノーマイカーの社会実験を予定している。
(受賞理由)
エコファミリー制度を全国初で本格実施し、さらに地域特性を考慮した「おしゃれな神戸らしい環境を優先した生活」の実現に向けて、継続的にモビリティ・マネジメントや交通ICカードを利用したレンタサイクル等を実施していることが評価できる。
【優秀賞】東京都荒川区
「人にも地域にも地球にもやさしい『環境交通のまち・あらかわ』の実現に向けて」
(概要)
荒川区の「環境交通」は、歩いて楽しいまちづくりや公共交通の利用を促進し、クルマに頼り過ぎない暮らしをすることで、CO2の削減や区民の健康づくりをすすめ、ひいては、まちの賑わいを創出することを目指している。荒川区では重点地域として汐入地域を選定し、EST協議会を設置することでESTモデル事業の計画とその実施・推進を図ってきた。
「環境交通のまち・あらかわ」の実現に向け、交通に環境の側面から総合的に取り組む「環境交通 省エネルギー詳細ビジョン」を策定した。本ビジョンで定めた具体的な施策のなかでも3つの施策(@エコドライブの推進、AMMの実施、Bカーシェアリングの普及促進)を重点事業とし集中的に取り組んでいる。それぞれの実績として@エコドライブの推進では、教習会を開催し実車を伴う受講者数は累計約300名に達した。AMMの実施では、区内の75%にあたる70,000世帯に情報誌を一斉配布し約16.6%が自動車利用を控えることとなった。Bカーシェアリングの普及促進では全国に先駆けてカーシェアリング導入支援を行い、初期経費を助成する制度を開始した。
また、環境交通が地域に定着した取組となっていくように普及啓発活動も積極的に行っている。具体的には、環境交通イベントの開催や小中学校を対象とした環境交通学習会の実施、区民向けのシンポジウムやワークショップ開催などである。環境交通学習の際に行ったアンケートでは「(自分が住んでいる)汐入地域が好き」と答える児童がほとんどを占め、さらに学年があがるにつれて地元への愛着や地域のよいところを理解していく姿勢が見られるなど、地域に根ざした事業となっている。
こうした一連の施策の実施による平成20年度のCO2削減量の合計は、1,270.9t-CO2/年と試算。平成19年度比1%削減という目標に対し、0.71%の削減であった。
(受賞理由)
環境先進都市として、エコドライブやモビリティ・マネジメント、カーシェアリングに加え、普及啓発活動を上手く組合せることによって、効率的・効果的かつ総合的に取組みが進められていることが評価できる。
【奨励賞】特定非営利活動法人ひらかた環境ネットワーク会議
「枚方に於けるバスタウンマッププロジェクト」
(概要)
04年の大阪府枚方市樟葉地区の「くずは地域公共交通活性化総合プログラム」を契機とし、05年からNPO法人ひらかた環境ネットワーク会議を中心として、行政(枚方市、大阪府枚方土木事務所、近畿運輸局)、交通事業者(京阪バス、京阪電鉄)、大学(大阪大学)が環境にやさしい交通まちづくりのためのコアチームを結成し、自治会等と協働しながらMMを中心として持続的に交通まちづくり活動をすすめてきた。
05年度には「くずは男山バスタウンマップ」を企画・編集・作成し、大阪府枚方市樟葉地区および京都府八幡市男山地区、3万世帯に居住者対象のMMを実施した。そのマップを用いて06年3月に同地区の名所旧跡など地域資源をバスでめぐることで公共交通を使った豊かな生活プランを参加者に体感してもらう「バス!のってスタンプラリー」(イベント型MM)を実施し、186人参加者が集まり好評であった。
その後、各回ごとに店舗、季節の花や農村風景など地域資源をテーマにしてスタンプポイントを設定し、楽しみながら交通とまちづくりのつながりを考えるイベント型MMを4年間で8回実施し、のべ1294名の参加者を集めている。06年には、枚方市全域のバスタウンマップを作成し、市内の45小学校や自治会、公共施設、バス営業所などを通じて4万部配布した。06年から市内の小学校等に学校教育MMを実施している。08年からは枚方市役所の転入届窓口でバスタウンマップを配布し、転入者MMを実施している。また、06年11月から枚方市や枚方市シルバー人材センターなどの協力を得て、ネットワーク会議が運営主体となり、レンタサイクルを京阪牧野駅試験的に実施した。09年4月からは枚方市シルバー人材センターに運営主体を変更し、本格実施への道筋を作ることができた。また、鉄道・バスの結節点である駅前広場を魅力的にするために、08年3月には京阪電鉄樟葉駅前広場を花で飾った上で、地域の住民の参加により踊りなどを披露するイベントを実施し、駅前広場の賑わいを創出する試みを行った。
このように、初動期は国土交通省の公共交通活性化プログラムによる支援を受けたが、その後、コアメンバーの資金のみで身の丈にあったユニークな活動を地域の多様な組織や主体と連携しながら持続しているのが特徴である。
(受賞理由)
地域に根ざしたきめ細かいモビリティ・マネジメントを継続的に実施していることに加え、リサイクル自転車のレンタル事業を新たに開始する等、積極性が評価できる。
【特別大賞】富山市
「持続可能なコンパクトシティを支える鉄軌道ネットワーク」
(概要)
本市では、全国でも恵まれた鉄軌道をはじめとする公共交通の利便性を向上させ、その沿線に、居住や商業、業務などの諸機能を集積することにより、必ずしも車にたよらなくても安心して暮らせるコンパクトなまちづくりを目指しており、これによって持続可能な地球環境を確保するものである。
その第1弾として実施した富山港線のLRT化では、衰退の一途にあった旧JRの鉄道を、運行頻度の大幅な増加や完全バリアフリー化などにより、全国初の本格的LRT「富山ライトレール」として蘇らせ、JR時代と比べ、平日1日の平均利用者は約2倍で推移するなど市民の足として定着している。
また第2弾として、現在取り組んでいる「市内電車環状線化事業」は、新幹線開業に合わせて整備が進む富山駅周辺地区と中心商業地区のアクセス強化と都心の回遊性向上などを目的として、既存の市内軌道の一部を延伸(約900m)し環状線化を図るもので、事業の実施にあたっては、軌道の整備は富山市が行ない運行は民間事業者が行なう全国初の上下分離方式により、平成21年12月の開業を目標としている。
さらに、JR富山駅を挟んで北側の富山ライトレールと、南側の市内軌道を接続する計画や、市内軌道の私鉄道への乗り入れなどの検討を進めており、これらのLRTネットワークが実現すれば、都心へのアクセスが強化され、拠点集中がさらに進むものと期待している。
既存の鉄道(JR高山本線)においても、利用者の減少とともにサービス水準が低下している現状にありながら、本市が費用を負担し、列車の増便を核として新駅設置、パーク&ライドやフィーダーバスなどの大規模社会実験を平成18年10月から実施したことにより、実験開始前(平成17年度)に比べ平成20年度は利用者が約10.5%増加するなど、県内の他の類似鉄道が減少傾向にある中、確実に効果が得られている。
これらの取り組みにより鉄軌道を始めとする交通軸を強化し、公共交通が便利な地域の人口を現在の約3割から約4割に増やし、自動車から公共交通への転換や移動距離の短縮、公共交通沿線での居住を推進すること等によって集約型都市構造「エコ・コンパクトシティ」を実現し、2005年比で2030年には運輸部門で30%、民生(家庭)部門で20%のCO2排出量の削減を目指すものである。
(受賞理由)
全国初の本格的LRT「富山ライトレール」が成功し、環境負荷の少ない持続可能でコンパクトなまちづくりを推進している実績に加えて、上下分離方式による既存路面電車の環状化など先駆的な取組み等が評価できる。 |