岩手県陸前高田市は東日本大震災以降、誰一人取り残さない地域づくりを目指しています。一方、復興を進める過程で、災害公営住宅における入居者の高齢化・孤立化や、整備された観光拠点施設から中心市街地への観光客の回遊不足という新たな課題が顕在化しました。その解決ツールのひとつとしてグリーンスローモビリティを活用し、平日は災害公営住宅と買い物施設を結ぶ「地域の足」、休日は道の駅高田松原から周辺の商業施設を周遊する地域ドライバーガイド付きの「観光客の足」として運行しています。また、地域電力会社が主体的に運行を維持し、再生可能エネルギー100%による運行を目指し太陽光発電設備等を整備しています。 陸前高田市での取組は、災害復興地域だけでなく全国の高齢化地域への応用が見込まれ、地域課題解決と同時に脱炭素化を実現する好事例といえます。一方で、高齢者のフレイル予防や買い物支援が求められており、グリスロの空間やドライバーによる見守り機能を生かした移動自体も楽しめる企画やスローショッピングといった、利便性や環境価値だけではない新たな価値の創出が模索されています。本セミナーでは、環境的にも社会的にも持続可能な地域交通に関する講演、陸前高田市での取組紹介とともに、意見交換を通じて陸前高田市での住民生活におけるグリスロ活用や脱炭素社会に向けた今後の展開、高齢化が進む他地域でのモビリティの可能性などについて議論します。
国土交通省東北運輸局、陸前高田市、EST普及推進委員会、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団